難病でも前向きに生きる応援団(旧さわやかブログ)

アニメ・ゲームや音楽から、難病支援に至るまで幅広い記事を書きます。

いつ起こるかわからない突然死の恐怖と闘う気持ち ~私の好きな小説 星新一の「処刑」~

私は小学生の頃から、個人が経営する、町のきったねぇ古本屋で100円や50円の文庫本やCDを漁るのが趣味でした。
記憶を辿ると、
文庫本なら
星新一ショートショート
スニーカー文庫等のファンタジー物・RPG
・内田康男さん赤川次郎さんなどのミステリー物
といった具合です。

特に星新一は大変愛読していて、ショートショート集だけで20冊以上持っていました。
小学校の国語の教科書に、「おみやげ」という作品が載っていたのを覚えている人もいるのではないでしょうか。
あらすじは、宇宙人が人類の進化のために、宇宙船の設計図などを詰めたタイムカプセルを地球に残していったのに、人類がそれを開けることなく、核戦争でタイムカプセルごと焼失してしまうというお話です。
4ページ程度の短いお話しです。

私が星新一作品で一番好きな話は、「処刑」です。
基本的にショートショートは、文庫本で20ページ以内に収まるぐらいです。非常に短い文章量できっちり起承転結を付けているため、登場人物の精神状況の描写などにはあまりページを割きません。
そんな中、この「処刑」は星新一作品にしては珍しく、主人公の心の葛藤といった描写があり、引き込まれるし、感情移入してしまいます。
覚えている限りでのあらすじは、火星に人が移住した時代はとうに過ぎ、資源を取りつくしたので既に火星に人は住んでいない時代。地球は人が密集しすぎて犯罪者を住まわせるスペースも無い。コンピューターによって犯罪者の判決が下され、死刑や無期懲役となると無人の火星へと送られてしまう。というお話です。いわば未来の島流しですね。
島流しされてから物語が始まるのですが、犯罪者に渡されるのは1つの道具だけ。それはボタンを押すと周りの空気の水蒸気を集めてコップ1杯の水が出てくる銀色の球体型の機械。ただし、ボタンを押すと何千分の1か何万分の1かはわからないが、はずれの1回を引いてしまうと、装置の内部にある小型の爆弾が爆発し、その使用者を木っ端微塵にしてしまいます。
食事はキャンディ状の錠剤を水に溶かすと膨らみ、1日分の栄養素と満腹感が得られるものが支給されています。
火星は地球よりも水蒸気が少ないのですぐに喉が渇いてきます。主人公はボタンを1回押す度に、死ぬかもしれない極限の恐怖と闘いながら喉の渇きと飢えをしのぎます。

小中学生からSF少年だった私は、この物語を読んで素直に面白いと楽しんでいましたが、ここ最近自分の病(マルファン症候群)のことを患者会などで情報を仕入れていくと、この主人公と似た状況なのではないかと思ってしまいます。
最近の医療の進歩により、寿命は60歳ぐらいまで延びたとはいえ(それでも平均寿命より20歳も少ないですが)、30代40代で突然心臓の弁が使い物にならなくなって急死したとか、私も発症した激痛を伴う大動脈解離や、大動脈瘤破裂で急死というマルファン患者の話を聞くと、平均的な人より早く死ぬということと、しかもいつ死ぬかわからない恐怖が常につきまといます。
気にし過ぎている故なのか、たまに背中や胸(鎖骨)のあたりにジンジンするちょっとした痛みを感じ病院に行くと、「そこは心臓じゃないでしょ、大丈夫」と言われる始末でした。
この「いつ死ぬかわからない」恐怖と隣り合わせというのは、結構心労になる場合もあり、気にしてしまうとQOL(Quality Of Life=生活の質)に影響してしまいます。

小説のラストでは(ここからはネタばれになるので読みたい人だけ読んでください)、主人公がある事実に気付きます。
一定確率で爆発するボールで死ぬというのは、何も特別な事ではなく、普通に地球で暮らしている人だって、交通事故や病気で突然死してしまうことがあるじゃないか!と気付き、そこからは開き直ってボールが作動する時に発する機械音が楽しいメロディに聞こえてきて、廃墟にあったお風呂のバスタブに水を溜め始め…。というハッピーエンド(?)で物語が終わります。

私は基本的に悲劇のヒロインを気取るのが嫌いなので、普段は自身が感じている苦悩や生きづらさを人に吐露することは少ないのですが、そもそもブログを始めたのも自身の病気だけでなくALSのように後天性の難病もあり、情報提供であったり啓蒙活動であったりを目的としています。
だから、こういった苦悩を感じている時もあったんだよ、という参考程度に聞いてほしいお話しなのでした。
ぶっちゃけ、苦悩はあったものの、小説の主人公と一緒で、最後は皆いつ死んでしまうかわからないのだから、気にすんなヒャッハー!と考えるようにしています。

 

 ↓収録本です。

ようこそ地球さん (新潮文庫)

ようこそ地球さん (新潮文庫)